この患者さんは熱心な方で、5年半の間、年間3〜4回経過観察、必要ある時だけミラクルデンチャーの調整をしてきました。
また当然すべき歯牙の治療、歯周治療等も継続しています。
ミラクルデンチャーを発案して約3ヶ月目に、この患者さんにミラクルを薦め、コバルトクロムの金属床で作製しました。
それまで約15年間は、アタッチメント義歯、次いでマグネット義歯を装着していました。
私自身そのどちらもが、やがては残存する歯牙に不具合を生じさせるという点などで、自信が無くかつ不満足でした。
ミラクルデンチャー発案当時、他の義歯とミラクルの装着の具合があまりにも違うと多くの患者さんからの報告を聞いていた時で、この患者さんからも同じような証言をいただきました。
外出していて、自宅に着いた途端、義歯のないことに気付き、駅まで探しに行って見つけることが出来なかったので、がっくりして自宅に戻ったら、洗面所にミラクルがあり、朝に洗って装着せずにそのまま外出したことを思い出したという“笑い話”をしてくれました。
他にも1人同じことおっしゃる患者さんもおられ、私自身、義歯の経験がありませんので、それは本当の話ですか? と聞きなおしたようなことです。
しかし、それほど装着している感覚がない、違和感がないといった多くの証言を毎日聞くたびに、感動と驚きを覚え、このミラクルデンチャーを是非、この地球上に残していくべきだ、でなければもったいないと考え、啓蒙普及活動を始めだして、現在に至っています。
今では、指導する全国の会員の先生方や、イベント会場などで出くわす歯科専門の先生方には、ミラクルこそが義歯の基準、常識であるとはっきり明言しています。
この患者さんには、約3年前に白金加金の金属床を再作製しました。
コバルトクロムと白金加金との差があまりにも大きいと確信したからです。
コバルトクロムと違い、金属の味がしないし、滑らかな感触がなんとも言えないとこの患者さんも他の患者さんも異口同音に証言していました。
現在も、この患者さんには左側2歯欠損の状態で、片側の設計になっています。
ミラクルの装置であるミラクルタッチのかかる歯牙の動揺やその他異常は、まったくありません。
ミラクルがしっかりと装着されていると、動揺していた歯牙の動きが止まるか、その動きを維持していくかといった展開で、より動揺が大きくなると感じることがありません。
この症例の設計も、当初からの設計ですが、2年ほど前から多くの設計法が発案され、こうした症例でも5つほどの設計があります。
また装置の形状もいろいろあり、一番適切な形状を症例ごとに用いています。
ワンパターンでの設計では、患者さんにとっての満点は得られないと考えています。
それぞれ、装着してみて患者さんに決定していただかなければといった51:49の微妙な症例もありますが、その残存する歯牙の形体や傾き、動揺度、装着・脱離の便利さなどを加味して、この設計で!・・・と決めて作製しています。
ですから、毎日全国の会員からの症例の設計に臨んでいますが、私にとっては、やりがいのある実に楽しく充実した時間になっています。
特にうまく装着出来て、結果良好といった会員の先生方からの喜びのメールが飛び込んできますと、いつになっても大いなる生きがい、やりがいを感じます。
出来る限り、その先生方のチェアータイムを少しでも少なくする、あるいは高齢な患者さんであれば、できるだけ着脱しやすい方法を考えますが、時には、パイオニア精神を発揮して、本邦初公開の設計にすることもあります。
そうしたことにより、多くの多様性のある、不適応なしのミラクルデンチャーへと大きく飛躍してきたように思います。
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