20年以上、某歯科医院を通院していたが、最近作製してもらった上顎義歯の咬み合わせに慣れず、悩んだ末に来院したとの事。
上顎の正中は大きくずれているし、咬み合わせも全く機能していない。
上下の修理改造を行うことにした。
なぜ、残根ばかりで、ほとんど治療がなされていないのか等についてあまり追求しなかった。
17時から20時までの3時間の闘いであった。
実にやりがいがあり、いつも通りミクロンの世界での治療を進めていく。
特に上顎の義歯はその残根と上手く適合し、ビクッともしない状況までになり、如何に歯牙を抜くという行為が、ある意味その患者にとって大事な権利さえも奪う行為にもなっているのではないかとも考えさせられた。
もちろん、抜歯せねばならない歯牙も当然ある。
しかし、自分の歯牙であれば、あるいは我が子や親の歯牙であれば、といった見方も我々歯科医師には要求されるのではないかとも思う。
つまりは、その抜歯を満たす理由と、患者の意思の尊重を明確にすべきであると、考えさせられた症例であった。
来院は8月22日と30日の2日間で終了とした。
患者はこのままで何もせずに過ごしてはいけないのかを尋ねていた。
治療すべき歯牙をせずに経過すれば、またもや厳しい時期が必ずやって来る。
今こそ、何でも噛めるようになったし、審美的にも満足出来たし、焦ることも無くなった故に、ゆっくりと確実に治療すべきであると説得し、大阪市内のK歯科医院を紹介した。 |