どこから手を付けるべきか?
迷った!
上顎5本の連冠のうち、3歯は唇側部の歯肉も無く、根尖がむき出している。
しかし、裏側では、歯肉が付着している。
ミラクルでは、このような歯牙であっても、抜歯せずに上手く応用すれば、大いに役立つ。
他の患者も有り、診断だけという約束で来院して貰った。
まずは上顎から作製すると患者に伝えて、この日は、何もせずに帰って頂いた。
2013/3/12
まず上顎の印象を採る。
17時50分。
ミラクルラボから女性テクニシャンが何か設計のことで相談にやって来た。
「この患者の義歯を作製するか?」 とそのテクニシャンに尋ねた。
「今からですか?」 と答えてくる。
今から出来るわけが無いじゃろうが・・・・、
ニッコリ笑いながら、「1時間ぐらいで出来ると思いますが・・・」
20時過ぎには診療所を出ていく用事があったが、上手く乗せられてしまった。
最近、歳のせいか、無理をすると必ず、その反動が来る等の考えで躊躇気味だが、いつの間にか吹っ飛んでいた。
「よし、やろう!」 と答えていた。
やるべき事の段取りは、瞬間的に思い浮かんだ。
1つの失敗、その手順を間違えると.経験上30分〜1時間ロスすることもある。
まず印象から・・・
普通に印象採得すれば、より歯牙を脱臼させ、元には戻らない事になり得る。
ミラクルテクニックを駆使して100%安全な印象法で臨む。
石膏の硬化時間が最小で約10〜15分。
その間に、完璧なる咬合採得を1枚のパラフィンワックスで成し遂げる。
咬ませること約10分。
模型に吸い込まれるようにバイトワックスが沈み込み、パーフェクトに決まった。
即、そのラボテクニシャンに手渡した。
約53分後の7時5分にその担当テクニシャンが作製物をもって診療室に飛び込んできた。
その、自信と誇りをどこかに秘めた笑いが、実に魅力的に可愛らしく思えた。
ミラクルを理解し、私の希望するところをチャンと読み込み、それを如何に手早く成し遂げるかを彼女は闘ってきた。
おそらく、100近い仕事を昨々年から昨年にかけて、毎日のようにこなしてきた。
こうしたミラクルラボのテクニシャン5人位と、どこか施設へでも行って、義歯に悩む患者を1日中処置すれば、約20人ぐらい、噛めなかったスルメ、昆布、何でも味わえる人生を、その患者達にもたらすことが出来るであろうと、簡単に想像がつく。
そうなれば、NHKの取材や、ヒョッとすればアメリカのABCニュースでも取り上げられるであろうと、冗談無く考えることもある。
しかし、そうしたことを望む気は失せている。
(年齢による価値観が変わってしまったのであろう)
ところで19時48分着脱の仕方も患者に指導して、完全終了。
2時間以内で前歯5本以外の9歯欠損の義歯を作製。
機能的に、咬む、味わう、喋る、24時間快適に装着して生活出来るなど・・・・
ギネスに掲載されても不思議で無い。
世界中の歯科医師がどれだけ頑張っても無理であると心底、思っている。
つまりは、ミラクルが義歯の基準、水準であり、コレを習得し、駆使しなければ、出来得るはずが無いのである。
最近は、出来る事さえ分かれば、もう年齢的にも無理すれば・・・ と考え自重してきたが、そのテクニシャンに上手く乗せられ、今回の結果となった。
患者にしてみれば、大きな悩みを半分解決できた。
当然、より難解な下顎に、同じく "その日ミラクル" で3月22日に望むことになる。
その日ミラクル以外のこと以外で考えていたのでは、先に進まないし、放置することで結果も悪くなる可能性大である。
少々無理してでも臨もうと考えた。
ミラクル会員への啓蒙のためのメール、問題送付、解答送付、日々の会員達の設計のアドバイス、作製物の分解写真撮影、講習会等の準備などなどに追われ、段々と患者に全勢力を傾けることが出来にくくなってきたようである。
ミラクルを発案して約10年。
最近、ミラクルブリッジ、ミラクルコーヌスデンチャーを考え、15個目の特許出願を行った。
16個目特許出願のミラクル弐もサンプル模型が出来上がり、超難症例に引き出しが増え、ますますミラクルの世界は大きくなってきた。
ミラクルを発案する前には、下顎で顎堤の無い症例で、吸い付いて全く外れない総義歯が出来上がった。
しばらく、それに没頭した。
その後にミラクルを発案し、総義歯にはまったく臨まなくなってしまった。
ミラクルの世界は、まだまだ大きくなっていくのか、ほぼ行き着いたのかは不明である。
しかし、ほぼ、如何なる症例でもやり切り、その患者の満点にまでやり遂げるとすれば、この義歯の基準、水準を多くの歯科医師、歯科関係者に伝達する義務はあるはずだ。
今は、それに向かってただ走るのみである。 |